JR安房鴨川駅までの道のり、岡部は寂しそうな表情をしていた。
隣を歩いている君津は、それを見るなり、
「どぉしたのぉ?岡部君」
「あ、いや。君津さんに会えないと思うと…」
「なぁんだ。そんなことぉだったんだぁ」
「え?」
「だってぇ。4月ぅなればまたぁ会えるぅじゃないのぉ」
「…、そうだけどさ」
「そうだけどぉ?」
「それまでが長く感じて…」
「岡部君…」
会話をしているうちにも二人は駅に着いてしまった。
「じゃぁ、またね」
「うん、また」
普通なのに何故か寂しい。岡部はそれを感じていた。
蘇我で京葉線に乗り換えて新浦安へ。
ふと、岡部は何か気がついた。
その翌日である。
再び、鴨川へ向かう岡部の姿があった。
あっという間に鴨川に。
いつもの変わらない風景。しかし、自分だけが取り残されたような、そんな違和感に岡部は囚われていた。
駅前の鴨川書店へ足を運ぶ、岡部。店内に入って、本を受け取った。
その姿を偶然に通りかかった君津が見つめていた。
自動ドアを出てくる岡部に
「あれぇ?どうしたのぉ?」
「あ、いや。注文して本を取りに来たんだけど…」
何とかして説明する岡部に向かって君津は
「嘘でしょ」
「え」
「ぜったい嘘だ」
「なんで…」
「だって、顔にそう書いてあるもん」
「……………」
黙ってしまった岡部に君津は
「ねぇ、ウチによっていかない?」
「…、うん」
勿論、岡部が喜んでいったのは言うまでもない。
しかし。
それを羨ましそうに見ている男が居た。
「あー、いいなぁ。あんな思いしてぇなぁ」
「また、追い回しているんですか?川口先生」
「な、何を言うんですか?三角君!お、俺は生徒のですねぇ」
「それは建前でしょ?」
「はぁ」
「この間なんかストーカーと間違われましたし」
「あ、いや。あれは違うぞ」
と、慌てる川口だった。
とにもかくにも、4月になるまで待たなきゃなと思った岡部であった。
-おしまい-