あの二人シリーズ第一話/はやしまさあき
春になれば・・・。
作者注:時期が時期なんで一応、春休みシーズンを想定して書いております。のでその雰囲気でお読みください。
(一部、実際に存在する学校名が登場いたしますが基本的にはフィクションです)
 ここは千葉県鴨川市。一応、観光地だが、そういうところでも、高校と言うのはある。そして、このハナシの舞
台となる鴨川第一高等学校がある。
 今日は3月20日。一応、後期が今日で終わった。その終わったのだが、写真部の部室で岡部はぼんやりと
過ごしていた。
「はぁ、やっと明日から休みかぁ。でも、2週間ぐらいしかないんだよなぁ」
 説明ともいえる台詞だが、実際そうであった。
 と、部室のドアが開く音がした。
「あれぇ?岡部君まだぁ、いたのぉ」
 入ってきたのは隣の部室、広報部の君津である。
「なんかぁ、今回はぁ説明的なぁナレーションがぁ付いて回ってるけどぉ」
「しょうがないだろ、殆どの人が読むの初めてなんだから…。それよりも」
「どうしたのぉ?」
「あ、いや。こんな遠くまで来る事ないと思うと、安心して」
「岡部君もぉ説明的ぃだけどぉ、そうよねぇ。浦安なんだもんねぇ」
「…、うん。今日はまだ残るの?」
 ふと、君津に目をやると窓のサッシに座り、ぼんやりと眺めていた。
「いやぁ、今日はぁもう帰るけどぉ」
「あ、そうなんだ…」
 岡部が期待していた答えじゃなかったらしく、がっかりとした表情をしていた。
 と、切ない場面なのにも関わらず…、
「あー、ほらほら。おみゃぁらはまだ、居たのか?いつまでもいちゃついてないで、早く帰った帰った」
「せっかく、いいムードなんだから…」
「な、何?三角先生この俺がムードを台無しにしてるって?」
「え?なに言うんですか、川口先生!僕はそんな事を言ってませんよぉ」
「大体なぁ。この小説での俺の扱いが前から気に入らなかったんだ」
「そんなこといっても誰も解らないでしょうよ」
「え?誰だ」
「…、あのー」
「ん?なんだ?また、適当に喋ったからって外せと言うのか?と言うか、おみゃぁは誰だ?」
「岡部ですけど」
「何だ岡部か?どうしたんだ」
「もう帰ろうと思ってたんですけど…」
「…、え?今回はそのパターンか…」
 岡部の一言にただ、呆然とした川口だった。
   JR安房鴨川駅までの道のり、岡部は寂しそうな表情をしていた。
 隣を歩いている君津は、それを見るなり、
「どぉしたのぉ?岡部君」
「あ、いや。君津さんに会えないと思うと…」
「なぁんだ。そんなことぉだったんだぁ」
「え?」
「だってぇ。4月ぅなればまたぁ会えるぅじゃないのぉ」
「…、そうだけどさ」
「そうだけどぉ?」
「それまでが長く感じて…」
「岡部君…」
 会話をしているうちにも二人は駅に着いてしまった。
「じゃぁ、またね」
「うん、また」
 普通なのに何故か寂しい。岡部はそれを感じていた。
 蘇我で京葉線に乗り換えて新浦安へ。
 ふと、岡部は何か気がついた。
 その翌日である。
 再び、鴨川へ向かう岡部の姿があった。
 あっという間に鴨川に。
 いつもの変わらない風景。しかし、自分だけが取り残されたような、そんな違和感に岡部は囚われていた。
 駅前の鴨川書店へ足を運ぶ、岡部。店内に入って、本を受け取った。
 その姿を偶然に通りかかった君津が見つめていた。
 自動ドアを出てくる岡部に
「あれぇ?どうしたのぉ?」
「あ、いや。注文して本を取りに来たんだけど…」
 何とかして説明する岡部に向かって君津は
「嘘でしょ」
「え」
「ぜったい嘘だ」
「なんで…」
「だって、顔にそう書いてあるもん」
「……………」
 黙ってしまった岡部に君津は
「ねぇ、ウチによっていかない?」
「…、うん」
 勿論、岡部が喜んでいったのは言うまでもない。
 しかし。
 それを羨ましそうに見ている男が居た。
「あー、いいなぁ。あんな思いしてぇなぁ」
「また、追い回しているんですか?川口先生」
「な、何を言うんですか?三角君!お、俺は生徒のですねぇ」
「それは建前でしょ?」
「はぁ」
「この間なんかストーカーと間違われましたし」
「あ、いや。あれは違うぞ」
 と、慌てる川口だった。
 とにもかくにも、4月になるまで待たなきゃなと思った岡部であった。
-おしまい-
過去の書庫への異動はこっち。